このデュアル フィラメント ソースは、2つの独立したヒーターを使用して、るつぼの長さ方向の温度変化を制御します。下部フィラメントは、ソースおよびるつぼの完全なアウトガス処理と高成長率を実現するために必要です。
デュアル フィラメント ソースは、「コールドリップ」モードでアルミニウムのみで使用されます。リップ部分は、るつぼの他の部分よりも意図的に低温維持され、アルミニウムの流出を防ぎます。アルミニウム フラックスの均一性は、るつぼの温度勾配を調整することにより最適化されます。
MBEのデュアル フィラメント ソースは、るつぼサイズの範囲内で、ほとんどの商用MBEシステムに対する代替品として利用可能です。小さな充填容量でも使用可能で、ソース温度の迅速なランピングが必要な場合は、円錐形のるつぼを備えた標準のデュアル フィラメント ソースが適切です。
数多くの施設からのデータによると、デュアル フィラメント ソースは、楕円欠陥の密度を著しく低下させることがわかっています。「コールドリップ」のシングル フィラメント ソースを「ホットリップ」のデュアル フィラメント ソースに置き換えると、5-10の要素によって欠陥密度が低下します。
ホットリップ ソースをガリウムおよびインジウム蒸着に使用すると、成長表面の楕円欠陥の形成が低下し、デバイスの性能が向上します。ソースに関連する形態上の欠陥に関して広く受け入れられている理論は、融液からの「吹き返し」、つまり、るつぼ開口部で凝結による水滴が発生し、熱い融液にこぼれ落ちることが原因ではないかというものです。1
この図は、ホットリップ加熱によって凝結を防ぎ、その結果吹き返しを防ぐ方法を説明しています。ガリウム酸化物などの融液の不純物も、楕円欠陥の原因となります。この場合、水滴は装置を取り巻く環境から不純物を集めることにもなるため、凝結を取り除くことも役立ちます。対象原料がアルミニウムの場合、デュアル フィラメント ソースでは、コールドリップで、ソースの遮熱性およびヒーターのフィラメントにダメージを与える可能性のあるアルミニウムの流出を防ぎながら、開口部を十分に加熱することでフラックスの均一性を実現します。デュアル フィラメント ソースを「コールドリップ」モードで動作させると、アルミニウム ソースの信頼性が向上すると共に、優れた性能を発揮します。
1. DG Schlom、et al、J.Vac。Sci. Technol. B 7、296(1989)。